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アイルランド パブダイアリー#1
The Brazen Head(Dublin)

2017.01.31

2012年11月より1年間、25歳のときに単身アイルランドを放浪しました。
目的は、「究極のパブ」を見つけること。めぐったパブは300軒以上。
異国の地で見たこと・感じたこと、プチ冒険譚仕立てでご紹介します。

 

執筆:田中荘子

 

~2012.11訪問~

 

アイルランド滞在中、最初に訪れた記念すべきパブ。

 

当時通っていたダブリンの語学学校で、
「パブめぐりのためにアイルランドへ来た」
と自己紹介すると、先生が笑いながらおススメの店を教えてくれた。
ここはダブリン最古のパブと伝えられ、その歴史は1198年までさかのぼる。

 

バーカウンターがあるスペースまでたどり着くには、まず店の入り口をくぐり、
開放的な中庭の席を通り抜ける。

 

日曜日の15:30。
日本であればまだ飲み始めるには早い時間だが、ここはアイルランド。
すでに店内はビール片手におしゃべりに花を咲かせる人で賑わいをみせている。

 

お目当てのバーカウンターにたどり着く。
さて、何を飲もうか、などと迷う必要はない。もう決めているのだから。
ここはやはりアイルランドを代表する国民的ビール、「ギネス」一択である。

 

滞在中「300軒目標」を掲げて乗り込んだアイルランドだが、
やはり異国の地の酒場に女ひとりで乗り込むのは勇気が要る。

 

頭の中で何度もシミュレーションした「ギネス1パイントください」をここぞとばかり、
なかば吐き出すかのようにして、バーカウンターのバーマンにぶつける。

 

「パイント」とは、アイルランドで用いられているビールグラスの基本単位。
1パイント約568mlだから、日本のビール瓶に換算すれば
中瓶と大瓶のちょうど中間くらいである。
これをスイスイと水のように杯を重ねるのがアイルランド人。到底まねできない。

 

次は席を見つけないと、と店内を見渡す。ひとりならカウンター席が手頃だろう。
カウンターに目をやると、そこには先客のおじ様たちがちらほら。
空いている席を見つけたものの、
「ここの席空いていますか?」の一言が出てこない。
注文するので精いっぱいの私にはハードルが高い。
そんな語学レベルでよく海外で生活しようと思ったな、と自分で自分にツッコむ。
約3秒。頭の辞書をひっくり返し、やっとの思いで彼らに声をかける。

 

そうやって、ようやく腰を落ち着けたものの、
まだガチガチに緊張する中でいただくギネスの味は、甘みがあって、優しかった。

 

そんな終始強張りっぱなしの私の心を解きほぐしてくれたのは、
店内でセッション中のミュージシャンたちの奏でる音楽だった。

 

トラディショナルアイリッシュのジグに、客は足踏みで参加する。
そして、その場にいる50~60人位が揃って足踏みをすれば、建物全体が揺れる。
バーマンはビールをサーブしながら、
タップ(サーバーに付いている、ビールの注ぎ口)を指先で打って鳴らす。

 

この陽気でカジュアルな一体感、これこそアイルランドのパブだ。

 

そうだ、これが、私が夢見た本場の空気だ。
パイントを空にするころには、不安な気持ちは消え去り、
感動と期待で心が満たされていることに気付く。

 

さぁ、これから一体、どんな出会いが待っているのだろう。(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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